資料
ISO26000 社会的責任に関する手引き
この国際規格は,規模又は所在地に関係なく,あらゆる種類の組織に対して,次の事項に関する手引を提供する。
― 社会的責任に関する概念,用語及び定義
― 社会的責任の背景,潮流及び特徴
― 社会的責任に関する原則及び実践
― 社会的責任に関する中核主題
― 社会的責任の課題
― 組織全体,並びに組織の影響の範囲における方針及び慣行を通じた,社会的に責任ある行動の導入,実施及び推進
― ステークホルダーの特定及びステークホルダーエンゲージメント
― 社会的責任に関する関与及びパフォーマンスの伝達
JIS Z 26000 社会的責任に関する手引
この規格は,2010 年に第 1 版として発行された ISO 26000 を基に,技術的内容及び構成を変更することなく作成した日本工業規格である。
リンク…日本工業標準調査会 (右上の「JIS検索」>Z26000を入力)
「4 社会的責任の原則」
4.6 法の支配の尊重
原則:組織は,法の支配を尊重することが義務であると認めるべきである。
法の支配とは,法の優位,特に,いかなる個人も組織も法を超越することはなく,政府も法に従わなければならないという考え方を指す。
法の支配は,専制的な権力の行使の対極にある。
一般に法の支配には,法令及び規制が成文化され,公示され,定められた手続きによって正しく執行されていることが暗黙の前提となっている。
社会的責任に照らして考えた場合,法の支配の尊重とは,組織はすべての関連法令及び規制に従うという意味である。
これはまた,関連法令及び規制を知り,組織内でこれらの関連法令及び規制を順守しなければならないことを通知し,これらの関連法令及び規制が順守されていることを確認するための手段を講じるべきであることを意味している。
組織は,次の事項を行うべきである。
― 組織が活動するすべての法的管轄区域において,法的要件を順守する。
― 組織の関係及び活動が必ず,想定された,関連する法的枠組みの中で実行されるようにする。
― すべての法的義務を把握しておく。
― 法令順守の状況を定期的に見直す。
4.7 国際行動規範の尊重
原則:組織は,法の支配の尊重という原則に従うと同時に,国際行動規範も尊重すべきである。
― 組織は,国内の法又はその施行によって環境又は社会を守るための最低限の保護手段が取られていない国々においては,国際行動規範を尊重するよう十分努力すべきである。
― 国内の法又はその施行が国際行動規範と著しく対立する国々においては,組織は国際行動規範を最大限尊重するよう十分努力すべきである。
― 法又はその施行が国際行動規範と対立し,しかもその規範に従わないことによって重大な結果がもたらされると考えられる場合,組織はできる限り,またなるべく適切に,その法的管轄内における活動及び関係の性質を見直すべきである。
― 組織は,法又はその施行におけるこのような衝突を解決するために,関連組織及び関連当局に影響を及ぼすための合法的な機会及び経路を探すべきである。
― 組織は,国際行動規範を守れない他組織の活動に共謀することを避けるべきである。
「共謀」とはどういう意味か
「共謀」には,法的な意味と法的でない意味がある。
法的な意味における共謀とは,法的管轄区域によっては,犯罪などの違法な行為の実行に対して,違法行為と知りながら実質的効果をもたらすような行為又は不作為を行うことと定義されている。
法的でない意味における共謀は,行動に対する広範な社会からの期待に由来している。
このような意味においては,組織がデューディリジェンスを実行していれば環境又は社会に重大な悪影響を及ぼす可能性があることを知っていたか,又は知っているはずだったような,国際行動規範と矛盾する,又は国際行動規範を軽視する,他者の不正行為の実行を助けた場合,その組織は共謀したと考えられる。
また,このような不正行為を知りながら黙っていた場合,又はその不正行為によって利益を得た場合も,共謀と考えられることがある。